解体工事の発注者に生じる義務について

解体工事の発注者に生じる義務について

2017/5/2

解体工事の発注者に生じる義務について

■はじめに

自分が所有する建物の解体工事を業者に依頼する場合に、依頼者は「発注者」または「施主」と呼ばれる立場になります。
解体工事において何か事故やトラブルが起きた場合、その責任を問われるのは多くの場合には工事業者です。発注者が責任を問われる事は少ないのですが、発注者にもある程度の義務があります。その義務の詳細については「法律で定められたもの」と、「条例で定められたもの」の2種類が存在します。
法律で定められた義務に関しては、どの都道府県、市町村に属する建物の発注者であれ皆共通です。しかし条例で定められた義務の場合、その建物の住所を管轄する地方自治体によって条例の有無や中身が異なります。
この記事では、まずは「法律で定められた発注者の義務」について説明した後、「条例で定められた発注者の義務」の例として渋谷区の条例を紹介します。解体工事の発注者の皆さんは、自身が所有する建物が属する地方自治体に似たような条例が無いか、確認しましょう。

■法律で定められた発注者の義務

2017年2月現在、解体工事の発注者に対し法律で定められた義務が、1つだけ存在します。
この義務は、解体工事を実施する建物が日本国内にあれば全ての発注者に対して生じます。例外はありませんから、解体工事の発注者の皆さんは必ずこの義務を守ってください。
どのような義務かと言えば、「属する都道府県に対する建物解体工事の事前申請」です。建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(通称:建設リサイクル法)に定められています。
建設リサイクル法に定められているのは、以下の申請です。

  • 解体工事に着手する日の7日前までに、工事計画書を都道府県知事に届け出る事
工事計画書は書式が決まっていますから、申請はさほど難しくありません。しかしどうしても不安な場合には、解体工事を依頼した工事業者に相談すれば代行してくれる場合があります。
申請をしなかった場合、発注者に対して最大20万円の罰金が課せられてしまいます。実際には罰金を課す前に発注者に対して行政指導が行われますが、それでも義務はきちんと守るようにしましょう。
発注者に課せられている義務はこれ1つですから、「自分で提出する」あるいは「解体業者に委任状を渡す」のいずれかを行い、きちんと義務を果たしましょう。

■条例で定められた発注者の義務:渋谷区の場合

ここからは条例で定められた発注者の義務についてです。渋谷区の場合を見ていきましょう。
念押ししておきますが、渋谷区にある建物を解体する場合には「工事7日前までに工事計画書届け出」も併せて必要です。これは法律に定められた義務ですから、忘れないようにしましょう。
渋谷区は「渋谷区建築物の解体工事計画の事前周知に関する条例」を制定しています。かなり細かく発注者に対して義務を定めているので、該当する発注者の方は注意が必要です。
その中身を見ていきましょう。

  • 対象となる解体工事
原則、解体床面積の合計が80平米以上の建築物の解体工事が対象になります。ただし、解体する建物にアスベストが使用されている場合は、無条件で対象になるので注意が必要です。
  • 発注者の義務
以下のように、かなり多いです。

1:解体工事計画届出書を提出

法律で定められた工事計画書とは別に、解体工事計画届出書を渋谷区に提出する必要があります。そのタイミングは、次に説明する標識設置よりも前です。

2:標識設置

発注者は解体工事の概要を記載した標識を、解体工事開始30日前までに解体工事を行う敷地に設置する必要があります。敷地が2つ以上の道路に接する場合には、それぞれの道路に接する部分にそれぞれ設置する必要があるので注意が必要です。

3:解体工事標識設置届を提出

標識を設置し終えたら、設置後5日以内に解体工事標識設置届を渋谷区に提出します。解体工事計画届出書とは別なので、注意が必要です。
もし解体工事の計画に変更があった場合には、まず速やかに標識の記載を訂正する必要があります。またその訂正後5日以内に、変更届を渋谷区に提出します。

4:個別説明または説明会の実施

発注者は解体工事及びアスベストなどの除去作業の方法について、解体工事開始の15日前までに「近隣住民」と「関係住民」に対して個別説明、または説明会を実施する必要があります。「近隣住民」と「関係住民」それぞれの定義については、条例を参照してください。

5:報告書の提出

近隣住民および関係住民に説明した後、報告書を解体工事開始10日前までに渋谷区に提出する必要があります。

以上が、渋谷区の条例で定められた発注者の義務です。より詳しい内容は実際の条例を参照してください。なお実際には、工事業者と協力して義務を果たしていく事になります。

■まとめ

以上、解体工事の発注者に生じる義務について説明致しました。上記のように自治体によっては、条例によって発注者に細かな義務を設定しています。
その目的はやはり、「住民の安全を守るため」です。解体工事は「ものを壊す工事」ですから、安全には細心の注意を払わなければなりません。
皆さんも所有する建物を解体する際には、「自身の義務」をしっかりと把握してください。そのためには「法律で定められた発注者の義務」および「条例で定められた発注者の義務」を果たさなければならない事を覚えておきましょう。

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